積み上げダイアログ ボックスでは、各出力巻線を互いに電気的に接続する方法を選択できます。多くの場合、巻線は互いに出力電圧と直列に接続され、クロス レギュレーションを改善しています。"積み上げ" とは、巻線が重なり合って積み上げられ、各巻数が追加されるごとに連続的により高い出力電圧を生成することを表す用語です。使用できる電気接続 (積み上げ構成) は以下のとおりです。
AC 積み上げ
DC 積み上げ
フローティング
これらの積み上げ構成の詳細については、PI Expert Suite のトピックの『付録 A: 多出力フライバック電源設計』を参照してください。
5 ターンの 5 V 巻線及び、12 ターンの 12 V 巻線の 2 つの出力トランス巻線を検討します。AC 積み上げは、12 V 出力が最初の 5 ターンを 5 V 巻線と共有するときのプロセスです。残りの 7 ターンは、12 V 巻線専用です。
AC 積み上げでは、5 V 巻線及び 12 V 巻線がターンを共有しない場合、フローティング出力よりもクロス レギュレーションの方が優れています。これは、AC 積み上げ構成では、低電圧側の巻線 (通常は調整された巻線) が極めて厳密に制御された電圧の一部を共有するためです。上記の例では、最初の 5 ターンにより生成される電圧が極めて厳密に制御されているため、12 V 巻線での変動が約 50% 低減されています。負荷変動による 12 V 巻線での唯一の変動は、上側の 7 ターンの結合の低さの結果として生じます。
DC 積み上げは、上側の巻線 (より高い電圧) が低電圧側の巻線の DC 調整側に戻されるときのプロセスです。DC 積み上げでは、AC 積み上げの利点のすべてが提供されますが、AC 積み上げと比べるとわずかにレギュレーションが良く、追加のダイオード降下により、出力電圧をより集中させることができます。ただし、高電圧の出力電流もすべて低電圧の出力ダイオード内を流れるため、回路の効率性は低くなります。
フローティング接続 (独立接続とも呼ばれる) は、2 つの出力巻線が共有しない接続です。フローティング巻線は、AC または DC 積み上げ巻線と同じレギュレーションの利点はありませんが、出力間にガルバニック絶縁が施されます。フローティング出力接続の望ましい使い方の例は、高電圧側及び低電圧側のドライバを駆動することです。
「最適化の概要」 のヘルプ トピックで説明しているように、最適化プロセスの間、数多くの出力積み上げ構成が検討されます。AC 積み上げは、負荷範囲において良好なクロス レギュレーションが得られるため、最も望ましい構成です。ただし、指定した公差に適合しない場合、ソフトウェアによって、仕様を満たすように AC 積み上げ、DC 積み上げ、及びフローティング巻線を組み合わせて使用することも試みられます。
最適化の間に DC 積み上げを使わない場合には、[積み上げ] ダイアログ ボックスの [DC 積み上げの有効化] ボックスのチェックを解除して無効にすることができます。また、[環境設定] ダイアログ ボックスの [デフォルトの設計設定] タブを使用して、すべての新規の設計においてデフォルトで DC 積み上げを無効にすることもできます。
[タイプ] リストでは、積み上げ構成を指定することができます。たとえば、巻線が他からガルバニック絶縁するように、巻線のフローティングが必要な場合があります。PI Expert では、望ましい積み上げ構成を手動で選択し、選択した積み上げ構成を使用して設計を最適化できる柔軟性が備えられています。最適化では、指定された積み上げ構成だけが使用され、可能な限り最良の設計が提供されます。
[タイプ] リストから別の値を選択して積み上げ構成を変更することができます。積み上げのタイプを変更した行には、 のマークが付きます。
使用可能な巻線の数及び電圧によって、各出力巻線の接続のタイプの選択は変わります。たとえば、プラス出力が 2 つだけあり、1 つを巻線フローティングにしたい場合には、AC 積み上げで 1 つのみの出力では意味をなさないため、実際には 2 つとも巻線フローティングにする必要があります。この例で、両方の巻線をフローティングに設定しない場合、PI Expert ではエラー メッセージが表示され、修正が提案されます。
マイナスの巻線にも接続のタイプを選択することができますが、選択はコモン リターン (RTN)またはフローティングに限定されます。また、PI Expert では、同じ出力電圧の複数の出力をサポートしており、必要に応じて巻線フローティングを仕様に合うようにします。
[デフォルトを復元する] をクリックすると、自動的に選択された積み上げのタイプを復元することができます。
ソフトウェアでは、メイン出力の上側で巻線に DC 積み上げをすることはできないので注意してください。この場合、PI Expert はエラーを発行して問題の修正方法をアドバイスします。