コンバータの「電力損失の合計」は、コンバータの主機能ブロック (入力部、PI デバイス、トランス、及び出力部) の損失の合計です。個々のブロックの電力損失は、そのブロックの主要損失要素の損失の合計です。
入力部では、「一次側損失の合計」の主要損失要素にブリッジ整流器、入力 EMI フィルタ及びコンデンサ、ヒューズ及び VDR (電圧依存抵抗)、一次側クランプなどの安全部品が含まれます。
PI デバイスでは、「デバイス損失の合計」には、主に内蔵されている一次側スイッチに関連する導通損失とスイッチング損失が含まれます。
トランスでは、「トランス損失の合計」に銅損失とコア損失が含まれます。
最後の出力部では、「二次側損失の合計」の主要損失要素に出力整流デバイス(ダイオード、MOSFET など)、スナバ回路、出力 EMI フィルタ、及びコンデンサが含まれます。
ブリッジ整流器の損失は、次の式によって計算します。
式1
ここで、VF はブリッジ整流器ダイオードの順方向電圧で、IinAV は次の式によって算出される平均入力電流です。
式2
ここで、η はコンバータの効率で、Po は連続最大出力電力で、VinDC はブリッジ整流器の出力の平均 DC 電圧です。
入力フィルタ コンデンサの電力損失 PCin は、次の式によって計算します。
式3
ここで ESRCIN100 は定常状態での動作温度、100 Hz におけるすべての並列入力フィルタ コンデンサの等価直列抵抗で、同様に、ESRCIN100k は定常状態での動作温度、100 kHz におけるすべての並列入力フィルタ コンデンサの等価直列抵抗です。IRCin はコンデンサへの RMS リップル電流で、IinRMS は整流された (DC) 入力バスの RMS 電流です。
すべての直列 EMI と安全部品の電力損失は、部品の抵抗と IinRMS2 の積として算出されます。入力 RMS 電流は、次の式によって計算します。
式4
一次側クランプの損失は、使用するクランプのタイプに依存します: TVS タイプ、RDC タイプ、または RDC-Z タイプ。
TVS タイプのクランプの損失は、次の式5 によって計算します。
式5
ここで、LPLKG と LSLKG はそれぞれ一次側と二次側の漏れインダクタンスで、NP と NS は一次側と二次側の巻数で、I1PK はメイン ハーフサイクルで平均化された最大電力における一次側ピーク電流で、FS はメイン サイクルで平均化されたスイッチング周波数です。
RDC タイプの一次側クランプの損失は、次の式によって計算します。
式6
ここで、VOR は一次側跳ね返り電圧で、RCLAMP はクランプ抵抗値で、VCEST は次の式で定義されるクランプ コンデンサ CCLAMP の推定電圧です。
式7
ここで、IC はスナバ コンデンサ ピーク電流です。
RDC-Z クランプを使用する場合、クランプの消費電力は次の式によって計算します。
式8
ここで、VZ はツェナー電圧です。
PI デバイスの損失は、デバイスにおける導通損失 PCOND とスイッチング損失 PSW の合計です。
式9
導通損失は次の式によって計算します。
式10
ここで、RDSon(T) は動作温度 T における一次側スイッチの強化されたチャンネルの抵抗で、I1RMS は一次側スイッチの RMS 電流です。デバイスのスイッチング損失 (PSW) は、ターンオン損失 PSWon とターンオフ損失 PSWoff の合計です。
式11
ターンオン スイッチング ロスの推定には、次の式12 に示すように、V2C の損失とトランス コンダクタンス損失が含まれます。
式12
ここで、COSS はターンオフ時のリング電圧 VinDC - VOR の谷(バレー)電圧おける一次側スイッチの寄生出力容量で、CTEST (≈50pF) は一次側に反映されるトランスの推定寄生容量で、KRP は一次側電流の連続動作比で (CCM では KRP<1)、TTURNon は過渡ターンオンの期間です。
PSWoff は最大電力におけるピーク電流 I1PK 及びターンオフ後にスイッチによってサポートされる電圧の関数として実験的に得られた一次側スイッチのターンオフ エネルギー損失のカーブから補間されます - (VinDC + VOR)。
メイン トランスの電力損失は、銅損失とコア損失の合計として計算します。銅損失は、トランスのすべての巻線の銅損失の合計です。各巻線の電流波形は、次のようにして、有限 (40 の高調波) フーリエ級数によって最初の解を求めることができます。
式13
ここで、IRMS は巻線の総 RMS 電流で、IRMSn は n 番目の高調波電流の RMS 値で、IREM は残りの高調波における電流の推定 RMS 値で、IO は出力の最大連続 DC 電流です。銅の実効抵抗 REFFn は、各巻線の各高調波に対して算出され、表皮効果と近接効果を表します。巻線 PCOPPER の銅損失の合計は次の式によって計算します。
式14
コア損失は次の式によって近似されます。
式15
ここで、Ve はコアの体積で、Bac は最大出力における磁束密度の振幅で、K、α、及び β は周波数に依存する定数です。10kHz < FS < 100kHz では、K = 0.0717、α = 1.72、及び β = 2.66 です。
CCM 設計は KP が 1 の近傍で動作するため、すべての整流デバイスのターンオフ時の電流は無視できます。したがって、すべての整流器のターンオフ損失は無視されます (PSW.OFF = 0)。その結果、すべての整流器の電力損失は導通損失とターンオン損失の合計として算出されます。
式16
出力整流には、一般に MOSFET またはダイオードを使用します。
MOSFET は同期整流器として使用され、導通損失とターンオン スイッチング損失は、次の式17 と式18 によって計算します。
式17
式18
ここで、RDSON.SR(T) は動作温度 T における SR MOSFET の完全に強化されたチャンネルの抵抗で、IRMS.SR は整流された巻線 (チャンネル内) の RMS 電流で、VD はチャネル電流がゼロに達したときに整流器がサポートするドレイン電圧で、I2PK は二次側導通間隔の開始時の二次側ピーク電流で、Trise は過渡ターンオン中のドレイン電流の立ち上り時間です。
ダイオード整流を採用している場合、ダイオードの導通損失 PCOND.D 及びスイッチング損失 PSWON.D は、次の式によって計算します。
式19
式20
ここで、VO は出力電圧で、TSWON はダイオードのターンオン時間です。
すべての整流器に簡単な RC スナバを使用します。スナバの損失 PSNUB は、次の式によって計算します。
式21
ここで、CSNUB はスナバのコンデンサ値です。
出力フィルタ コンデンサの電力損失 PCOUT は、次の式によって計算します。
式22
ここで、ISRMS は巻線の RMS 電流で、ESRCOUT はコンデンサの ESR です。すべての出力フィルタ コンデンサの損失の合計が算出されます。
すべての出力フィルタ チョークの抵抗部品の損失は、次の式23 によって計算します。すべてのチョークの損失が合計されます。
式23