スイッチング電源には、最も一般的な EMI要求事項に適合する EMI フィルタが必要です。「EMI フィルタ」のヘルプ トピックで説明した通り、PI Expert には、伝導 EMI フィルタのための基本回路が用意されています。このトピックでは、さまざまな EMI 部品とその用途の詳細について説明します。
Y コンデンサは、コンデンサの故障が感電につながる可能性のある、ラインーグラウンド間に使用されます。Y コンデンサにはさまざまなサブ クラスがあります。最も一般的に使用されるのは Y1 と Y2 の 2 つですが、その使用方法は異なります。Y1 コンデンサ (250 VAC 安全定格) を使用する場合は、安全絶縁バリアを越えて一次側 (入力) と 二次側 (出力) 間に接続します。二次側に誘導され、AC 入力ライン経由で一次側に戻ることを強制されるコモン モード電流を戻すための経路が Y1 コンデンサによって提供されます。Yコンによって低減されたノイズ電流が PI デバイスのソース ピンに分流されることを防ぐために、Y1 コンデンサは、一次側の高電圧 DC バス側から二次側 (出力整流器が出力コンデンサのプラス側に電流を送る場合はリターン) の安定ノードに接続されます。この Y1 コンデンサが最も効果的に機能するには、トランスのリード線までの基板配線の長さをできるだけ短くダイレクトに保つ必要があります。Y コンデンサが DC マイナス系統にリターンする必要がある場合は、コモン モード電流が整流コンデンサのマイナス ノードに直接流れ、ソース ピンと整流コンデンサのマイナス ノードの間のパターンで共有されないように Y コンデンサが配線されていることを確認します。
Y1 コンデンサの容量を増やすと、コモン モード EMI ノイズが減る一方で、アースの漏れ電流が増えるという2次的な影響が生じます。アースに流すことができる異常電流の絶対限界については、AN-15 でも説明しています (9 ページの表 1 と本文を参照)。
特定の 定格のY コンデンサを別の定格の Y コンデンサに使用してはいけません。特に種類が異なるコンデンサの定格を一緒に使用しないことは重要です。Y コンデンサのそれぞれの定格は、安全に直接かかわる特殊な定格となっています。適切な Y タイプ コンデンサを使用しなかった場合、感電につながる可能性があります。
X コンデンサは、入力とニュートラルの間、または入力同士の間で使用され、X コンデンサが故障しても感電にはつながりません。X コンデンサは 3 つのサブクラスに分けられます。X1 コンデンサは、周期的な高出力パルスを吸収するように設計されているため、高価になります。したがって、通常、電源のEMI フィルタ部では使用しません。また、X3 コンデンサも通常は電源で使用しません。最もよく使用されるのは X2 コンデンサです。X2 コンデンサは、1 nF ~ 1 µF の値で利用でき、通常、安全機関が定めるほとんどの燃焼性基準に適合します。
EMI フィルタ用に設計されているインダクタには、次の 3 つの重要なパラメーターがあります。目標周波数での効果的なインピーダンス、定常電流定格、及びサージ電流容量です。
DM チョークは一般的に、ソレノイド形状またはトロイダル形状の鉄心コアあるいはフェライト コアに巻き付けられています。単一の巻線層に巻線されたDM チョークは、巻線間容量が最も少なく、自己共振周波数が最も高くなります。
CM チョークは一対の結合インダクタです。CM チョークでは、2 つの別々の巻線が同じコアに巻き付けられています (トロイド型またはボビン型)。巻線が同じ方向に巻き付けられるため、ディファレンシャル モードの信号 (ライン周波数など) からの磁束はコア内で打ち消され、スムーズに通過します。しかし、コモン モード電流に対しては高いインピーダンスとなり、その結果、コモン モード EMI が低減します。一般的に、2 つの巻線はコアの別々の部分に巻き付けられます。そのため、巻線間の容量は最小限に抑えられます。
EMI 部品及び EMI 低減技術の詳細については、「AN-15」を参照してください。